大津地方裁判所 昭和42年(わ)217号 判決
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【判決理由】<証拠>を総合すると、次の事実が認められる。即ち、
「被告人は自動車運転を業とするものであるが、昭和四二年四月一二日午後二時四五分ごろ、大型貨物自動車を運転し、大津市松原町三番一六号地先県道(歩車道の区別があり、車道の幅員九・一メートル)左側部分を北方に向け時速約四〇キロメートルで進行中、前方の道路左端に軽自動車が二台駐車していたので、これを避けるため車を稍右に寄せセンターラインをまたぐ様に進行していたところ、前方約三三メートルの道路左側(被告人からみて、以下同じ)を佐波清三郎(当時七四才)が足踏自転車に乗つて対向進行してくるのを認めた。右自転車は前記駐車中の軽四輪自動車の右側方を通過するため、道路中央寄りに出てくることが予想され、自車と自転車と駐車中の自動車との距離関係から、右駐車中の軽四輪自動車の側方の辺りで自車と自転車とが行き違うことが予想されたので自車を更にやや右に寄せ、自車のボデーの左側がセンターラインのやや左側の辺りを通れば十分行き違いできるものと考えて進行していた処、自車と自転車との距離約一五メートルに迫つた時、右自転車が急にセンターラインの方へ曲つて来たため、危険を感じ急制動の措置をとるとともに、右にハンドルを切つたが及ばず、センターラインより更に右へ一メートル余、入つて来た自転車と自車左前部と衝突し、転倒した同人は頸椎骨折等の傷害を受け、その場で即死した。」
以上の事実が認められる。公訴事実に記載のとおり「自転車が駐車中の自動車の右側方を進行すべく道路中央寄りに出てくることは、予想される」ところであり、さればこそ前記認定のとおり被告人はセンターラインをまたぐ様にして走つていたのを更にやや右に寄せて走つていたのであるが、被害者が急に右に曲つて中央寄りに出て来るだけでなく更にセンターラインを越えてまで右に出て来たことは被告人にとつては正に意表外の出来事で通常人の注意能力をもつてした場合の予見可能の範囲外のことであつたと言わねばならない。
被告人が司法警察員に対する供述調書中で「……まさか急に中央に出てくるとは思いませんでしたので……その自転車が急に道路中央にふらふらと出てくるのに気がつき、びつくりして……」と延べ、検察官に対する供述調書中で「私の車が駐車中の手前の方の軽四輪のすぐ手前まで来た時自転車が急にセンターラインの方へ出て来ました」と述べているのは、被告人にとつては意表外の出来事であつたことを物語るものである。被害者が死亡しているので、なぜこの様に急にセンターラインを越えてまで右側に出て来たのかその理由を解明しえないけれども、この様な被告人に予見可能の範囲外の出来事については、その過失責任を問うことはできない。もし被害者が前記のとおり急に右に曲つたのでなく、もつと早くから道路の左側から右側へ移りつつあつたのならば、話は又別であるがその様な事実はこれを認めるべき証拠がない。